AGV(無人搬送車)を利用するメリットと最新の物流トレンドとは?
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物流業界は今、2024年問題に代表されるように、人手不足に悩んで直面しています。この問題に対し、AGV(無人搬送車)がひとつの解決策として注目されています。AGVは自動化による省人化やスマートファクトリー化に貢献しますが、人手を省くことだけがAGVのメリットではありません。
AGV(無人搬送車)の導入により、物流倉庫の作業が劇的に改善されることが期待されているのです。AGVは物流業界のコスト削減と安全性を両立させています。これにより、ファクトリーオートメーションの新しいトレンドが生まれてきました。
しかし、AGVが物流のすべての問題を解決できるわけではありません。誘導システムと最新技術を使ったAGVは、これからどう物流業界を変えていくのでしょうか。本記事では、AGV市場の現状と種類毎の特徴、そして特にこれまでAGVの適用が難しかった屋外へのAGVにフォーカスを当てて詳しくご紹介します。
AGV(無人搬送車)とは?
物流業界を自動化し効率化を図る上で、AGV(無人搬送車)は大きな役割を果たしています。1980年代から開発され、工場や倉庫において普及してきており、決して歴史が浅いものではありません。これらの多くは磁気誘導や自律走行技術を活用し、作業の効率を向上させています。
トヨタは、日本の大手メーカーとしてAGVを市場に投入し、フォークリフトをロボット化することで業務の効率化を実現しています。これらのAGVは、先進安全自動車(ASV)推進計画の一環として開発されており、車載センサにより外の状況を検知し、運転支援を行います。具体的には、トヨタのAGVは物流や工場での搬送作業の自動化に活用され、電磁誘導線に沿って自動で走行し、カートなどを牽引する機能を持っています。トヨタのAGVは、フォークリフトの自動化によって業務の効率化を図るとともに、物流や工場での搬送作業の自動化に貢献しているAGVの先駆けとして知られています。
AGV(無人搬送車)の仕組みと種類
AGV(無人搬送車)は、磁気誘導やレーザー誘導、画像認識、ナチュラルナビゲーションなど、多様な誘導方式で動きます。それにより追従型や自律走行型のAGVがあり、使用環境に合わせた選択が可能です。
AGV(無人搬送車)は、使用環境に応じて屋内タイプと屋外タイプの2種類に分けられます。
屋内タイプのAGVは、工場や倉庫の室内環境での使用を想定しています。室内は環境が比較的安定しているため、高い走行精度が得られます。また、防水・防塵性能は必須ではありませんが、一定の耐久性は備えています。屋内タイプのAGVは、屋外タイプと比べて比較的低コストで導入できるのが特徴です。
屋外タイプのAGVは、建屋間の搬送など、屋外環境での使用を想定しています。屋外では、雨風に耐えうる防水性能と、路面の凹凸に強い走破性、天候に左右されない走行性能も求められます。そのため、屋外タイプのAGVは、屋内タイプに比べて高価格となる傾向にあります。また、屋外での走行には高精度な位置検知機能が不可欠です。
屋内型AGVを屋外で運用することは困難であり、屋内型AGVと屋外型AGVは別のものととらえ導入を検討する必要があります。
屋外型AGVの特徴
屋外型AGVは、雨天時でも機能を保持し、故障することなく運用が可能です。また、傾斜のある地形であっても搬送作業を行うことができるため、広範囲な敷地内外での搬送に非常に適しています。屋内用AGVに比べて、過酷な環境下での使用が前提とされており、耐久性にも優れています。
屋外型AGVの用途
屋外型AGVは主に工場や倉庫の屋外エリアでの使用に適しており、建屋間の物品輸送や広大な敷地内の搬送に利用されます。このように広い範囲での効率的な物流を実現するために、屋外型AGVは非常に重要な役割を果たしています。
屋外型AGVの導入ポイント
屋外型AGVを導入する際には、使用される環境が屋外であることを確認し、雨天や傾斜地での走行性能を検証することが重要です。また、防水性や耐久性など、屋外走行に適した機能を備えているかどうかも確認する必要があります。
屋外型AGVは、雨天や傾斜地でも問題なく稼働できるため、広範囲な無人搬送を構築したい企業にとって最適な選択肢です。導入の際は、使用環境に適した機種の選定が重要となります。
屋外型AGVにおいては、イブオート(eve auto)がAGVの導入を検討する企業にとって選択肢となりえます。
eve Autonomyは、ヤマハ発動機とティアフォーによって設立された合弁会社で、自動運転技術を活用した無人搬送ソリューションを提供しています。
主なサービス「eve auto」は、屋外での高い走破性を持つEVカートと自動運転技術を組み合わせたもので、工場や物流施設などでの建屋間搬送を実現します。サブスクリプションサービスとして提供され、アフターサポートや自動運転保険も含まれています。
自走式と無軌道式の違い
自走式のAGVと無軌道式のAMRには大きな違いがあります。自走式は設定されたルートを辿るのに対し、無軌道式はSLAM技術でその場の環境を読み取り、最適な経路を見つけます。AMRは、環境を読み取り、最適な経路を動的に見つけることができるため、ロボットによるピッキングやフォークリフトの作業がスムーズになりました。
各メーカー(トヨタ、リコー等)による製品と実績
トヨタとリコーは、日本のAGV市場で注目されています。トヨタは磁気誘導やナチュラルナビゲーションを利用したAGVを提供。一方、リコーは独自の誘導方式でAGVを提供し、最適なソリューションを提供しています。
ZMPの「CarriRo」は、ランドマーク式走行方法を採用。多様な連携ソリューションを展開し、選択肢を広げています。
- トヨタ|磁気誘導によるAGVシステムと、それに伴う産業別ソリューション
- リコー|画像認識を活用した高精度のガイドシステム
- ZMP|CarriRoによるランドマーク式走行方式の実績
AGV(無人搬送車)導入のメリットとデメリット
物流業界において、AGVは生産性を上げる重要な要素といえます。1980年代から効果的に使われており近年では様々な選択肢があります。しかし、導入する企業の視点ではAGVを使う際のメリットとデメリットを知っておく必要があります。
AGV(無人搬送車)導入のメリット
結論としてAGVの導入メリットは、労働力の節約やコスト削減です。ヒューマンエラーを減らし、生産性を向上させることが可能です。人的作業の負担が減り、運搬業務に安定をもたらします。無人搬送システムは、主に物流センターなどで効率を上げます。
AGV(無人搬送車)導入のデメリットとその対応方法
初期費用として、走行路の変更やシステム開発のコストがかかります。安全のために、セキュリティ対策も必要です。法規制の遵守と標準化も大切です。
デメリットには、専門家と協力することが有効です。メンテナンス費用を見積もりに入れたり、レンタルプランを使うこともいい方法です。
<導入メリット> | <導入デメリット> |
労働力の節約 | 走路変更コスト |
コスト削減 | プログラム設計コスト |
生産性の向上 | セキュリティ対策の必要性 |
ヒューマンエラーの低減 | 法規制と標準化の遵守 |
省人化 | メンテナンス費用 |
最新の物流システムとは?
物流業界では、技術がどんどん進化しています。特に、AGV(Automated Guided Vehicle)やAMR(Autonomous Mobile Robots)のようなテクノロジーが注目されています。これらの搬送ロボットは、自動化された環境で様々なタスクをこなし、作業の流れをスムーズにしています。
AGVとAMRの違いとそれぞれの強み
AGVは、磁気テープや光学テープに沿って動きます。一方、AMRはLiDARやSLAM技術を使って、自分で道を見つけて移動します。これにより、自動で物を運ぶ際に、より少ないリスクで効率を上げることができます。
これらのロボットは、SLAM技術を用いて周囲を理解しながら動きます。そのため、より複雑な作業も柔軟にできます。AGVは決められた道を運ぶのに対し、AMRは障害物を避けて最適な道を選びます。
日本における物流システムのマーケットは成長していると言えます。2021年から2022年にかけての市場は116.1%増加しました。そして、2030年にはさらに大きく成長すると予測されています。
参考:https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=22135&view_type=2&la=ja
2022年8月のロジザード株式会社の調査によると、回答者の約86%が3年以内に物流ロボットの導入を計画しています。大企業の半数も2028年までにスマートロジスティクス化に関連してロボットを導入する見込みです。
参考:https://www.logizard.co.jp/news/2022/08/dxreport.html
しかし、導入初期の高コストは大きな課題です。物流業界の約45%が、高い初期費用やメンテナンス費用を懸念しています。
しかし自動化への取り組みは進んでおり、AGVやAMR技術による自律走行は、物流の効率化を推進しています。技術の進展に注目し続けることが大切です。
AGVとオペレーターの協働の必要性
近年日本では人手不足が問題となっています。この問題を解決するため、物流現場で協働が推進されています。特に、AGV(無人搬送車)とオペレーターの連携は重要です。
AGVの技術は、センサーやITシステムと組み合わせることで、労働者の働き方を改善します。これにより、労働力不足を解消し、業務を効率化できます。
オペレーターとの連携がもたらす効果
AGVとオペレーターが連携すると、作業がスムーズになります。手動操作が可能な低床式AGVなどは、オペレーターに安全かつ簡単な操作を提供します。
フォークリフトと組み合わせることで、安全性と効率の両方を向上させる運搬システムを作ることができます。このようなシステムは、物流倉庫や製造現場で大きな効果を発揮します。
フォークリフトと無人搬送車の組み合わせ事例
大林組はAGVを用いて、建設現場の課題に対処しました。AGVは複数台で連携し、磁気テープ不要の無軌道走行を実現します。
この技術により、フォークリフトの必要人員を削減。作業者は他の業務に集中できます。EffiBOTなど高度なAMRを参考にすることで、AGVは多くの企業で使われています。
参照リンク
- https://www.nikken-totalsourcing.jp/business/tsunagu/column/575/
- https://toyocongroup.co.jp/blog-labor-saving23/
- https://blog.rflocus.com/what-is-agv/
- https://ja.wikipedia.org/wiki/無人搬送車
- https://www.zmp.co.jp/knowledge/column/20211220
- https://www.ricoh.co.jp/service/digital-manufacturing/media/article/detail04
- https://ai-market.jp/purpose/agv/
- https://www.phoxter.co.jp/archives/1708
- https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00154/01326/
- https://note.com/autosubsidy/n/nc559d90c1f91
- https://www.marubeni-idigio.com/insight-hub/about-autonomous-mobile-robot/
- https://www.plibot.co.jp/about/obayashi/